パワハラの発生に対処するイメージ

平成28年に厚労省が実施した「企業内でのパワハラの発生状況」の調査では、過去3年間にパワハラに関する相談を受けたことがある企業は、回答企業全体の49.8%にのぼります。実際にパワハラに該当する事案は回答全体の36.3%となっており、3社に1社はパワハラが起こっています。

被害者の人権を侵害するパワハラは発生した場合、雇用主として早急かつ適切な対応が求められます。実際にパワハラが発生した際の流れを紹介します。

■職場でパワハラが発生した場合の把握と相談フロー

パワハラの内容を把握しているイメージ

●パワハラの把握方法

パワハラ行為は社内もしくは社外からもたらされる報告により、人事担当者は実体を把握することが多いようです。厚生労働省の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によると、企業はパワハラの把握方法として下記のような取り組みを行い、効果をあげていることがわかりました。

  • 人事等の社内担当部署への相談や報告で
  • 社内または社外に設置した従業員向けの相談窓口で
  • 人事考課などの定期的な面談で

パワーハラスメント事案の把握方法(複数回答、従業員規模別)のグラフ

調査結果を詳しく見ると、従業員の規模により把握方法に傾向が見られます。企業規模が大きくなるほど「社内または社外に設置した従業員向けの相談窓口」や「人事等の社内担当部署への相談や報告」でパワハラを把握する傾向が見られます。

つまり、直接の上司や同僚よりも、専門の部署の方が相談がしやすい、ということがうかがえます。

厚生労働省が運営するパワハラ対策についての総合情報サイト「あかるい職場応援団」ではほかにも、パワハラの相談先として下記を紹介しています。

 

総合労働相談コーナー
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

個別労働紛争のあっせんを行っている都道府県労働委員会・都道府県庁
https://www.mhlw.go.jp/churoi/assen/index.html

法テラス
https://www.houterasu.or.jp/index.html

みんなの人権110番
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html

かいけつサポート
http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/itiran/funsou020.html

 

人事担当者は、上記の窓口を従業員に周知して、パワハラに悩んでいる従業員に対応できる取り組みを社内で行うことが大切です。

●パワハラの相談フロー

相談窓口が複数あることを理解したところで、厚生労働省の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」従い、パワハラ事案が発生した際、雇用主の対応の流れとポイントを解説します。

 

【雇用主の対応の流れ】

1:相談窓口

2:事実関係の確認

3:行為者・相談者へのとるべき措置を検討

4:行為者・相談者へのフォローアップ

5:再発防止策の検討

【対応のポイント】
1:相談窓口(一次対応)

相談者が相談しやすくなるように、まず相談窓口で相談者が話した内容について秘密が守られることや、後々不利益な扱いを受けないということを明確にしておきましょう。

相談者の気持ちの切り替えや冷静な時間の確保を考えて、予め1回あたりの相談時間を説明したうえで相談を受けましょう。目安は50分程度です。

また、相談者の話をゆっくり聞くことを心がけましょう。対応者の対応次第で相談者の不信感が増大する可能性があります。聞く側は、詰問にならないよう傾聴する姿勢を心がけましょう。

2:事実関係の確認

相談者の了解を得たうえで、行為者や第三者に事実確認を行います。第三者に事実確認を行うことにより、パワハラ事案の発生が外部に漏れる可能性が高まります。第三者への守秘義務の徹底と、事実確認を行う第三者の人数をできる限り少なくしましょう。

また、メールやLINEの内容客観的証拠を提出してもらい事実関係を確認することもあります。

3:行為者・相談者へのとるべき措置

事実確認の結果としてパワハラの診断について、3つのパターンが考えられます。

  • パワハラがあったと判断
  • パワハラと判断はできないが、今後事態が悪化する可能性があり、対処が必要と判断
  • パワハラの事実は確認できないと判断

パワハラがあったと判断にした場合、措置としては行為者または第三者への注意や指導、行為者から相談者への謝罪、異動、懲戒処分などがあります。もし、判断や措置の内容に迷った場合は、顧問弁護士や社会保険労務士、弁護士会の法律相談、都道府県労働局に相談しましょう。

4:行為者・相談者へのフォローアップ

行使者・相談者に対し、雇用主として取り組んだ調査や考え方を説明し、理解を得ます。パワハラ事案としてとりあげられた行為者の発言や行動、仮に相談者に問題があった場合の指摘事項などを説明します。

行為者に処分が課せられる場合であっても、処分内容は行為者の個人情報となりますので、たとえ相談者であっても「会社の就業規則に則り、処分する」と伝えるに留めましょう。

5:再発防止策の検討

パワハラ対策に関する定期的な見直しや改善、社内での情報共有を行い、再発防止や予防につなげます。

 

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■従業員を守るための人事担当者によるフォロー

人事担当者が従業員をフォローするイメージ

雇用主の対応の流れとポイントを紹介しましたが、人権が侵害された従業員を守るためのフォローの詳細を紹介します。

●被害者の安全・安心と健康の確保

被害者がパワハラを受けたことにより、うつ病や適応障害などの精神疾患が疑われる場合は、精神科医や心療内科医などを受診させましょう。休養が必要な場合は、社内の制度を利用するよう人事担当者は従業員に対するフォローを心がけましょう。この場合、労災保険の申請や慰謝料の請求に発展する可能性があるので、医師から診断書を発行してもらう必要性も伝えましょう。

 

【診断書について】

医師は患者から診断書交付の請求があった場合、記載・発行の義務があります。発行に際し必要な情報は下記の内容となります。

  • (患者の)指名、現住所、生年月日、年齢
  • 病名、所見、療養のおける注意点
  • 療養期間

●社内制度の対応範囲と給料の説明

パワハラの被害者は被害以前と異なる職場環境に身を置くことになります。被害者が利用可能な制度や行使可能な権利、給料の支払額を整理し、被害者に伝えるなどして、被害後の負担を減らしましょう。

●健康保険の傷病手当金

労務不能の状態で、治療のため3日連続を含む4日以上休業した場合、給料を支払っていないのであれば、健康保険の傷病手当金を受給できる旨を伝えましょう。

●労災申請

労災保険を申請する場合は療養期間と医師の証明印が入った診断書が必要となります。労災保険の申請は被害者自身が行うものですが、パワハラの証拠など申請の際に必要な情報は人事担当者が被害者に共有しましょう。

 

【労災申請】

労災申請にあたり提出書類は3通あります。
※厚労省のHPよりダウンロードができます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/rousaihoken06/

  • 療養補償給付たる療養の給付請求書_業務災害用(様式第5号)
  • 療養補償給付たる療養の費用請求書_業務災害用(様式第7号(1))
  • 休業補償給付支給請求書(様式第8号)

上記書類の様式第5号の提出先は病院となり、7号と8号は労働基準監督署が提出先となります。

 

パワハラによる精神的・肉体的などの健康面以外にも、給与や職場における立場など、被害者はさまざまな困難に直面します。社内でのヒアリングは診断書の申請、労災申請など、被害者は煩雑な処理が発生する場合も想定されますので、雇用主は従業員の守るためできる限りのサポートを心がけましょう。

■被害者に対する人事評価

被害者に対して公平な人事評価を行っているイメージ

パワハラ被害者への雇用主によるフォローは必要です。一方で人事評価とパワハラ被害は全く別物であり、社内の評価規定に則り評価を行いましょう。相談窓口にも、人事評価に関する内容の相談があることから、公平な人事評価制度の担保はあかるい職場づくりには欠かせない要素といえます。

パワハラに対応できるフローを作成しておくことが大切

パワハラに適切な手順で対応しているイメージ

パワハラが起きない職場をつくらないことが最も良いことですが、パワハラと診断されるような事象が起きてしまった場合は、適切な手順を踏み、問題が複雑化しないうちに解決したいものです。上記のフローや対応策などを参考にして、人事担当者として自社に適切な対策を考えておくことが大切です。

 

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