サイバーエージェントのトライアウト方式

「採用には全力を尽くす」という標語をミッション・ステートメントに掲げ、「YJC」という全員採用プロジェクトを推し進めるサイバーエージェント。新卒採用においては多数の「インターン」を実行し、ナビサイトへの掲載も止め、自社サイトのみでの告知に止めているなど、ユニークな採用方針が目立つ同社だが、その「採用試験」にも独自性が目立つことが複数存在する。

今回はその中でも「トライアウト」という同社が2015年から取り入れ始めた採用試験について詳述する。

■サイバーエージェントの「トライアウト」試験とはなにか?

トライアウト方式とは、

  • 制限時間中(だいたい90分〜120分)に、
  • あるお題に対して(新規事業を考えよ、●●の改善案を考えよ、など)一人で考え、
  • 担当社員(面接官)に提案し、
  • 担当社員よりフィードバックをもらい、
  • そのフィードバックを基に提案内容をブラッシュアップし、
  • 再度提案を行う。
  • これを制限時間中無制限に繰り返す。

上記のような採用方式である。

■なぜトライアウトは生まれたのか?

トライアウト方式は非常に難易度が高い試験、受験者にとってももちろん負荷が高い試験なわけだが、担当する従業員の負荷も高い。提案を複数聞き、適切にフィードバックをしなければならないからだ。実際そのように適切に対応できる従業員を選ばなければいけないので、採用人事側の負荷も高い。

そのような負荷の高い試験をなぜ導入したのか。

同社は基本的に「インターン経験者から採用をする(内定を出す)」ということを採用活動の基本としている。一般的な面接試験での精度が低いことは同社の人材科学センターの分析でもナレッジ化されており、また、カルチャーマッチを重視するという根本思想からもインターンが最適な手段だと考えている。

しかしながら理系や大学院生などはインターンに参加する時間も限られており、本試験のみになってしまいがちなのも事実。そうした学生向けに、インターンと同じようなレベルでお互いの見極めができないか、という問題意識から生まれたのがこの「トライアウト」方式だ。

■トライアウト方式の効用は?

サイバーエージェントの特殊な採用方式

トライアウト方式は取り入れられはじめてから数年経つが、形を変え磨きをかけられながら継続して採用されている。その効果・効用としては、学生の見極めが多角的に行える点が非常に大きい。

  • 課題に取り組む集中力
  • 思考の持続力
  • フィードバックに対する素直さ
  • 提案し続ける粘り強さ
  • 一生懸命になれるかどうか

などなど、サイバーエージェント社が重要視している採用要素を多面的に評価することができる。また、社員側のフィードバック能力が向上するに連れ、「学生側の試験満足度」が非常に高いのも特徴だ。

受験した学生は、その合否に関わらず「勉強になった」「脳みそに汗をかく事ができた」などとコメントしており、このプロセス自体がクロージング要素になることもある。

 

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【編集長・渡邊が考える、ここがポイント】

トライアウト、は私(渡邊)が新卒採用責任者に就任時にかかえていた課題を解決するために生み出した手法で、自分の想像を超えて組織に根付いている採用方式だ。ちょうど2016年入社採用の時期で、倫理憲章などもあり、各社が動きづらかった時期でもある。

そのような中で、サイバーのインターンに来れない(来ない)学生、とりわけ理系学生、大学院生、国公立学生などをペルソナに設計した採用スタイルが「トライアウト」だ。

 

高難易度だが、サイバーエージェントらしさもほしい。

そういった難しい要望に答えるべく、課題自体は難易度を高く(しかしながら90分くらいで完結させられる内容)、一方でスタートアップらしくピボット、ブラッシュアップがたくさんできる機会を作る、という方法で対応した。副産物として、それに取り組む学生らの姿勢を観察することもでき、起案当初よりもその効果性の高さを実感した。

参考ブログ:今年のサイバーエージェントの一般採用では「トライアウト方式」を採用しています。
https://ameblo.jp/adman/entry-12010692248.html

 

非常にオリジナリティが高く、負荷も相当にかかる採用方式のため、どんな会社でも採用できるスタイルではないが、自分たちが採用したい人材はどんな人物像で、その人物像を見極めるために必要なことは何なのかを見極めることが肝要である。

実際、トライアウト方式も最初は数時間に及ぶ試験だったが改善を重ねる中で今のような制限時間に落ち着いているし、課題となる思考テーマもだいぶ変更を加えてきた。大切なのは、課題と向き合い、実験し、フィードバックサイクルを回すことである。

ぜひ各企業でもこうしたオリジナリティの高い採用方式を生み出してもらいたい。

 

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