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就業日なのに社員が突然黙って休んでしまう「無断欠勤」。無断欠勤は、周りの社員にも悪影響が及ぶため、人事担当者としては防ぎたいところです。今回は社員が無断欠勤してしまう理由や、無断欠勤を続ける社員への対応方法、さらに無断欠勤する社員を出さないための施策をご紹介します。
 
 

■社員が無断欠勤してしまう理由とは

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社員は、なぜ会社に申し出ずに無断欠勤するのでしょうか。無断欠勤への対応の手がかりをつかむために、まずは無断欠勤の定義と心理について確認しましょう。
 
●「無断」欠勤に該当するかは、企業の判断
「無断欠勤」については法律などで定められていることはありません。つまり、どのような場合に「無断」の欠勤にあたるかは、企業によって異なります。社員が欠勤の連絡をしたとしても、所定の権限者への連絡ではない、または正当な理由として認められないために「無断欠勤」となることもあります。
 
企業は、欠勤する場合の手続きや、無断で欠勤した場合の処分について、就業規則などに明記しておくとよいでしょう。欠勤が発生した場合に、社員にとっても人事担当者にとっても「無断」に該当するのかという判断もつきやすくなります。
 
今回の記事では、企業に連絡なく欠勤することを「無断欠勤」として扱うことにします。
 
●無断欠勤をする理由や心理
 
弁護士や保険労務士などに寄せられる無断欠勤に関する相談から、無断欠勤を行う社員の理由や心理が読み取れます。以下のようなものが理由として多く挙げられています。場合によっては、無断欠勤とはならないこともあるので、欠勤の理由や社員の状況を確認することが必要となります。
 
〇自己管理上の理由
寝坊や自己管理不足など、仕事を休むための正当な理由がないままに無断欠勤する社員が多くいます。弁護士に寄せられる社員の無断欠勤への対処の相談でも、社員本人の「だらしなさ」を無断欠勤の原因と指摘しているケースが見られます。
 
〇社内でハラスメントを受けている
セクハラやパワハラなど、社内の誰かから何らかの嫌がらせを受けて無断欠勤しているケースもあります。ハラスメントの事実があるかを調査し、結果的に問題が見つかれば社員の欠勤は止むを得ないということになる可能性もあります。ハラスメントの事実が確認できない、あるいは欠勤を要するほどではないという判断がされた場合は、社員に出勤命令などを出すことになります。
 
〇怪我や病気による体調不良
何らかの怪我や病気で即時に適切な休みの連絡ができず、無断で欠勤してしまったという場合もあります。そのような場合は、「正当な理由である欠勤」にあたります。状況を確認し、しかるべき休暇制度や休職制度を適用することを社員に提案しましょう。
 
無断の欠勤でも、理由や状況により、無断欠勤にならないこともあります。また、無断欠勤の理由が欠勤者以外にある場合は、人事は職場環境の改善を検討しなければなりません。逆に、寝坊や「なんとなく仕事に行きたくない」などの理由であれば、社員に出勤してもらうように対応する必要があります。次の項目では、人事担当者がとるべき対応方法をご紹介します。
 
 

■無断欠勤を続ける社員への対応方法

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無断欠勤を続けている社員に対して人事担当者はどのように対応すべきでしょうか。法的紛争になった場合のリスク回避を視野に入れた対応と、社員のメンタルのケアを重視した対応に分けて解説します。
 
●法的紛争のリスク回避を視野に入れた対応
無断欠勤を続ける社員への対応としては、「解雇」も選択肢の一つになります。しかし、解雇には法律上一定の制限が存在しているため、企業は事前に適切な手順を踏んでおかなければなりません。ここでは、訴訟や労働審判で解雇が無効とされてしまうリスクを回避するための事前の手続きを確認しておきます。
 
1.無断欠勤している社員へ連絡する
まずは本人に連絡します。なぜ欠勤しているのか、身は安全で無事なのかなどを確認する意味でも、必要です。その際、連絡した記録も残しておきましょう。
 
2.場合によって、処分をくだす
社員と連絡がとれて無断欠勤の理由が確認できたら、社内規定などに則り、処分をくだすかを検討します。厳重注意や、反省文・始末書の提出をさせる企業もあるようです。社員に対して、きちんと欠勤の理由を確認し、その理由が妥当でない場合に注意・指導を行ったという事実が、解雇の合理性を形づくる要素のひとつとなります。
 
3.出社命令を出す
社員に連絡がとれたものの、そのまま正当な理由なく欠勤している場合や、あるいは連絡がとれないまま無断欠勤を続けている場合は出社命令を出す必要があります。「現状のままでは就業規則に基づき退職となる恐れがある」など、就業規則で定められていることがあれば明示しましょう。
 
4.休職または退職の勧奨や解雇
社員が出社命令にも応じない場合は、休職や退職を勧奨することになります。場合によっては解雇も視野に入れた対応を行います。
 
●メンタル面での対応
無断欠勤が続いている社員は、メンタルヘルスの不調に陥っている可能性があります。あまりに長く欠勤が続くようなら、産業医に相談したり、心療内科などでの診断を薦めたりするのも一つの方法です。メンタル面での対応について、見てみましょう。
 
1.社員に診断書を提出するよう連絡する
就業規則に記載しておくことで、診断書の提出を義務付けることも可能です。
 
2.メンタルの状態に合わせて、労働環境などの見直しを検討する
医者によるメンタルの不調が確認できれば、症状にあわせて休職や契約内容の変更など、次にとるべき手段を判断します。適切な方法を検討しましょう。
 
●無断欠勤をする社員の解雇で注意すべきこと
無断欠勤している社員に対して企業としてあらゆる対応をしてみたものの、無断欠勤が続くような状態であれば、残念ながら社員の「解雇」も検討しなければなりません。
 
〇解雇を検討する場合は「解雇権濫用の法理」に注意
解雇については、労働契約法が一定の制限を設けています。下記で詳しく見てみましょう。
 
労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
 
この制限を「解雇権濫用の法理」と呼び、労働者に対する法的保護が充分ではなかった明治時代に、不合理な解雇を避けるために設けられました。企業は簡単には社員を解雇することはできないのです。
 
ただし、条文の文言は抽象的なため、どのような解雇理由が「客観的に合理的」かつ「社会通念上相当」と認められるかは、判例・裁判例の蓄積をもとに判断されています。そこで、以下の項目で、これまでの裁判例などから「解雇可能なケース」と「解雇できないケース」をご紹介します。
 
〇無断欠勤している社員を解雇できるケース
 
・無断欠勤が2週間以上続いている
労務安全情報センターが監修している「解雇に関する法制の概要」によると、裁判所は、無断欠勤のうえ連絡がとれない状況が2週間以上、正当な理由がなく続いている場合、解雇できると判断しています(東京地方裁判所平成12年10月27日判決など)。また、企業の就業規則に「無断欠勤による懲戒解雇」の規定がある場合などは、無断欠勤が2週間まで達していなくても、解雇が可能なケースもあります。
 
・何度も注意・指導し、改善の機会を与えたが無断欠勤を繰り返す
たとえば、無断欠勤について非を認めないうえ、上司からの注意も全く聞こうとせず、短期の無断欠勤を繰り返すなどして改善の見込みがないことが明らかである場合などです。労働契約法16条の「社会通念上相当」とは、「社会の一般常識で考えた場合に妥当」という意味であり、世間的に解雇されても仕方がないと考えられる場合には解雇できるということです。上述した2週間に満たない無断欠勤を繰り返しているケースで、かつ、就業規則に「無断欠勤による懲戒解雇」の規定がない場合であっても、改善の見込みがない場合であれば、合理的な理由があるとして解雇できる可能性があります。
 
〇無断欠勤している社員を解雇できないケース
 
・職場内でのセクハラやパワハラが原因での無断欠勤
職場内でのハラスメントが原因で社員が無断欠勤を続けている場合は、企業は社員を解雇することができません。使用者である企業には社員が働く環境を改善する義務があり、セクハラやパワハラなどの問題を解決して社員が出勤できるようにしなければなりません。
 
・精神疾患が原因の無断欠勤
精神疾患が原因で社員が無断欠勤している場合、企業は社員を休職させ治療に専念させる必要があります。代表的な裁判例に「日本ヒューレット・パッカード事件」(平成23年1月26日東京高等裁判所判決)があります。社員が精神的な疾患から被害妄想にとらわれたことにより無断欠勤をしていたため、企業が社員を解雇したことが、裁判では「不当解雇」と判断され、企業は社員に対して約1600万円を支払うよう命じられています。
 
●無断欠勤をする社員の賃金や有給休暇の取り扱い方
それでは、無断欠勤を続けている社員の賃金や有給休暇は、どのように取り扱うべきなのでしょうか。それぞれについて、ご説明します。
 
〇社員が働いた分は賃金を支払う義務がある
無断欠勤をしているからといって「ペナルティーとして賃金を支払わない」ということは基本的にできません(労働基準法16条)。企業には、社員が出勤していた時点までの賃金や残業代を支払う義務があります。ただし、賃金の請求権は発生から2年を経過すると時効により消滅します(労働基準法115条)。この期間を過ぎていれば、社員からの給与や残業代の請求に応ずる必要はありません。
 
〇無断欠勤を有給休暇の消化とみなす義務はない
無断欠勤の後、その期間を有給休暇の消化として申請する社員もいます。しかし、企業は有給休暇の事後申請を認める義務はありません。労働基準法は企業の事業運営に配慮し、有給取得の申請に対して休暇の時季を企業が指定する権利を与えています(時季変更権・労働基準法39条5項)。この条文は、有給休暇取得に事前申請を要することが前提となるため、事後の申請には対応する義務はないということなのです。
 
欠勤を続ける社員にどのような対応をしたらよいのかは、理由や状況、社員の対応によって変わってきます。人事担当者は、しっかりと状況を見極めて対応しましょう。
 
 

■無断欠勤する社員をださないために人事ができること

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企業としては、無断欠勤する社員をださないための対策をとることも大切です。人事担当者や上司、同僚がとれる施策を、具体的な導入事例とともにご紹介します。
 
●無断欠勤させないために日常的に観察
社員の無断欠勤を防ぐために、社員や職場環境を日常的に観察することが大切です。日頃から観察していることで、社員の異変に気づき、無断欠勤を防ぐことができます。以下のポイントに気を付けて観察してみましょう。
 
〇勤怠管理
上司や人事担当者は、日頃の勤怠の状況をしっかりと管理しておきましょう。社員が就業規則に則って、日々出勤しているかどうかを確認します。
 
〇無断遅刻の原因を把握
勤怠の状況を把握するのと合わせて、社員が無断遅刻をしてしまった場合に、最初の1回できちんと原因を把握するようにしましょう。あわせて、申告のある遅刻や欠勤でも、可能であれば、その理由を把握したいところです。早期に原因を把握してフォローし、遅刻が続くことや、欠勤につながらないようにしたいところです。
 
●無断欠勤を減らす施策の事例紹介
実際に企業が実施した、無断欠勤を減らすための施策の事例をご紹介します。
 
〇社員参加型の職場改善活動で改善
離職・欠勤が減らないコールセンターで行われた対策です。社員参加型の「職場改善ワークグループ」を作り、まずは個人で職場の良い点・悪い点を挙げ、次にグループでそれを集約しディスカッションを行いました。その中で「グループですぐに改善できるもの」を決め、改善計画を立てて実施。その後、成果報告会を行い、良かった事例はコールセンターで継続的に取り入れました。
 
この取り組み後にアンケート調査を実施したところ、「みんなで楽しく働く職場づくりを考えて実践できるというやりがいをもてた」という声や、「無駄な報告を廃止し、その分残業が減って家族と過ごす時間が増えた」というポジティブな意見が集まり、職場の環境が改善したことで離職や欠勤率が低下しました。
 
日頃から、社員の様子を観察し、職場環境を改善することで社員が前向きになり、無断欠席する社員を出さない、または無断欠勤が減少するという良い影響が見られるようになります。社員に悩んでいることや困っていることがあるようならば、まずは話を聞いてみることが大切です。
 
 

日々の職場環境の整備と社員フォローで無断欠勤ゼロに

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社員が無断欠勤してしまう心理や、無断欠勤が続く社員への対応方法、さらに無断欠勤する社員を出さないためにできることを解説しました。人事担当者として、日頃から働く環境や社員に気を配り、無断欠勤のない職場を目指しましょう。